チームの士気は、業務の成果を直接左右する要素です。社員が自分は評価され、やる気を持てていると感じれば、仕事への関わり方、定着率、仕事の質ははっきりと上向きます。士気を高く保つには、いくつもの面で意識して、しかも一貫して取り組む必要があります。価値観をどう根づかせ、成果をどう認め、コミュニケーションをどう組み立て、成長をどう後押しするか、といった面です。ここで紹介する6つの取り組みは、そのひとつひとつに対応しています。 主なポイント 会社の文化は、スローガンを掲げるだけでは育ちません。日々の行動で何度も強化していく必要があります 従業員を大切にし、育て、その働きを認めれば、動機は目に見
生産的な仕事のための効果的な休憩
休まずに働き続けると生産性が落ちることは、すでにさまざまな形で裏づけられています。十分な休憩をとらずに頭を使い続ければ、判断の質は下がり、ミスは増え、疲れは日を追ってたまっていきます。原因はやる気よりも、脳の働きそのものにあります。脳には本来のパフォーマンスの波があり、その波に逆らって働けば、どれだけ時間をかけても実際に生み出せる成果は減ってしまいます。計画的な休憩は、手を抜くための妥協ではありません。質の高い仕事を続けるための前提条件です。
重要なポイント
戦略的休憩で大事なのは、異なる種類の休息(身体的、認知的、社会的)が、それぞれ異なる回復目的に役立つということです
生産性のパラドックスとは、より多くを成し遂げるために、計画的に働く量を減らす必要があるということです
効果的な休息の文化を作るのは組織の役目です。休憩への体系的アプローチが、チーム全体のパフォーマンスを向上させます
休憩が重要な理由
頭の働きは一日じゅう同じではありません。情報をどれだけうまく処理できるか、注意を保てるか、判断を下せるかは、脳のリズムに合わせて上下します。休まずに働き続けても、パフォーマンスが一定に保たれるわけではありません。少しずつ落ちていき、仕事の質を下げる結果が、決まった順番で表れてきます:
- 判断のスピードが落ちます 休む間もなく頭を使い続けると、前頭前皮質の働きが弱まっていくためです。
- 仕事の質が下がり、ミスが増えます 注意力を支える資源が、確実に保てる限界を超えてすり減っていくためです。
- タスクを終えるまでの時間が延びます 疲れた頭での処理は、休んだ後の頭に比べて、どれだけ力を入れても遅く、効率も悪いためです。
- 創造的な発想が止まります ひらめきが生まれるには脳のデフォルトモードネットワークが働く必要がありますが、一つのことに注意を向け続けている間は、この働きが抑えられてしまうためです。
- 疲れがたまり、慢性的なストレスになります 主要なストレスホルモンであるコルチゾールが、下がるきっかけとなる休息のないまま高い状態で続くときです。
こまめな休憩は、仕事から奪われた時間ではありません。仕事ですり減った頭の資源を取り戻すための時間です。休憩をとらなければ、その時間に代わりにした仕事の質も効率も下がります。
少しの科学
休憩の生物学的な裏づけは、ウルトラディアンリズムにあります。脳にはもともとパフォーマンスの周期があり、効率よく処理できる時期と、パフォーマンスが落ちて回復に向かう時期を交互に繰り返しています。効率の高い時期には、集中を保ち、込み入った問題を解くことができます。回復の時期に実際に休まないでいると、集中しにくい、落ち着かない、仕事の質が落ちる、という形で表れてきます。
刺激物や気合いで回復の時期を乗り切ろうとしても、一時的にごまかせるだけで、その分あとでもっと深い疲れがやってきます。長く続けられるのは、仕事の中身を脳の自然な周期に合わせるやり方です。調子の山では頭をたくさん使うタスクに取り組み、谷では軽めの作業をするか、しっかり休みます。
休憩によって体が回復する仕組みには、いくつかのシステムが関わっています:
- 脳のデフォルトモードネットワークは、一つのことに向けていた注意を休めたときに働き出します。これが裏で情報を処理し、創造的なひらめきや新しい問題の解き方の土台になります。
- 脳は休んでいる間も情報を処理し続け、意識して頑張るだけではできないパターンの発見や情報の整理をやり遂げることがよくあります。
- コルチゾールの値が下がります 本当に休めているときには、体のストレス反応がリセットされ、慢性的なストレスによる構造的なダメージが生じる前に元に戻ります。
- 深く集中する力が戻ります 休んでいる間に注意力の資源が補われるので、次の作業は、力が落ちた状態からでなく、頭が万全の状態から始められます。
コルチゾールが慢性的に高いままだと、影響はパフォーマンスだけにとどまりません。Neurology誌に掲載された2018年の研究では、症状のない若年から中年の成人で、血清コルチゾールが高いほど脳の容積が小さく、記憶力も低いという関係が見つかりました。この関係は女性で最も強く表れていました。コルチゾールが高い人は記憶と視覚認知のテストで成績が悪く、脳全体と灰白質の容積も小さくなっていました。慢性的なストレスは働きぶりを下げるだけでなく、測って確かめられるほどの脳の構造の変化にもつながる、ということを示す結果です。
戦略的に休憩を取る
疲れを感じてから、その場しのぎでとる休憩は、あらかじめ決めた間隔でとる休憩ほど効果がありません。理由は脳の仕組みにあり、自分で疲れたと感じるころには、頭の働きはもうかなり落ちているのです。前もって予定に入れた休憩なら、疲れてからの休憩では取り戻さなければならないほど深く消耗する前に手を打てるので、パフォーマンスを高いところで保てます。
もうひとつ考えておきたいのは、集中した作業に戻るには、ふたたび入り込むための時間がかかるということです。深い作業に必要な注意の状態を取り戻すには、脳にも少し時間がいります。予定になかった長い休憩を少しだけとるより、すっかり消耗する前に短い休憩を予定どおり何度かとるほうが、作業に戻るまでのむだが少なくて済みます。
1. スケジュールされた作業と休息の間隔。 ポモドーロテクニック(25分の作業 + 5分の休息)は、作業を区切る枠組みとして便利です。ただ、ちょうどよい間隔は職種や作業の種類によって違います。プログラマーやアナリストの場合は、標準のポモドーロより長めに集中し、休憩もしっかりとるパターンのほうがうまくいくことが多いという研究もあります。デザイナーやクリエイティブな仕事をする人なら、さらに長い創作の時間のあとに体を動かす休憩をはさむほうが、ウルトラディアンリズムに合うかもしれません。どのやり方でも原則は同じです。予定に組み込んだ休憩は、疲れてからとる休憩よりも効果が高いこと。そして間隔は全員一律に決めず、その仕事がどれだけ頭を使うかに合わせて調整するべきだということです。詳しくはこちら:個人生産性ソフトウェア, リモートチーム管理ソフトウェア。
2. 異なる目的のための異なる休憩:
- 認知的休憩。込み入った問題がなかなか進まないときは、性質のまったく違うタスクに切り替えるか、スケッチや散歩のような頭をあまり使わないことをしてみます。するとデフォルトモードネットワークが働き出し、頭の奥で処理が続きます。しばらく本当にその問題から離れてから戻ると、根を詰めて考えていたときには出てこなかった答えが見つかることがよくあります。
- 身体的休憩。座りっぱなしの仕事では、脳への血流や、体を動かすことで生まれる神経化学的な働きが弱まります。軽い運動をはさむ、階段を使う、机でストレッチをする、技術的でない話し合いは歩きながらするなど、どれも体を動かしたあとしばらく、頭の働きをはっきりと高めてくれます。
- 社会的休憩。同僚とのちょっとした雑談は、リモートワークで生まれがちな孤立を和らげ、孤立によってふくらむ漠然としたストレスを減らします。こうした休憩から生まれる気軽なやり取りは、思わぬ問題解決の場にもなります。形式ばらない会話からは、改まった会議では出てこない答えがよく浮かび上がってきます。
- 学習休憩。体を動かして休むほうが好きな人には、短い時間で何かを学ぶ休憩もおすすめです。新しい技術の考え方や専門書を読むなど、決まった学びの時間をとれば、ただ休むときの手持ちぶさたを避けつつ、注意の向け先を本来の仕事から切り替えられます。
管理職向け
組織として見ると、十分に休めていないことによる生産性の損失は、一人に集中するのでなくチーム全体に薄く広がります。そのため目立ちにくく、仕組みの問題なのに、個人の出来不出来のせいにされがちです。しっかり休めるチームの文化を作るには、漠然と休むよう勧めるだけでは足りません。具体的な取り組みが必要です。
- 模範を示してリードする。リーダーがふだんから実践している振る舞いは、組織で何が大事にされているかをチームに伝える、いちばん強いメッセージです。マネージャーが人目につく形でいつも休憩をとっていれば、休むことは仕事の一部であり、やる気が足りない証拠ではないと伝わります。
- 継続的な可用性の文化を拒否する。長時間労働を美化したり、いつでも連絡がつくことを評価の物差しにしたりすると、コルチゾールが慢性的に高いままになり、頭の働きも落ちて、長い目で見て仕事の質がむしばまれます。高い成果を持続させるには休む時間が必要ですが、こうした文化はその時間を当たり前のように削ってしまいます。
- 身体的および仮想的回復スペースを作成する。仕事以外のことをするための場所を、オフィスにもオンラインにも用意しておけば、休むことを個人任せにせず、組織として大事にしているという姿勢が伝わります。リモートのチームなら、仕事の議題のない気軽なチーム通話が、オフィスでの雑談と同じ役割を果たします。
- チーム回復儀式を確立する。長い会議のあとに短く体を動かす時間を設けたり、あえて仕事の話をしないチームのチェックインを行ったりすれば、個人の予定の組み方だけでは守りきれない回復のタイミングを、決まった形で確保できます。
- 時間ではなく成果を評価する。評価の基準を、どれだけ長く働いているように見えるかから、どんな成果を出したかに移せば、役に立つかどうかにかかわらず働き続けなければという無言の圧力がなくなります。一人ひとりの調子の波に仕事を合わせる、柔軟な働き方もしやすくなります。
チーム回復を組織化するためのテクノロジーツール:
- 思いがけない人どうしをつなぐ、ランダムなオンラインのコーヒーブレイクを設定するSlackボット。
- チームの共有スケジュールに、必ずとる休憩の時間をカレンダー上で確保しておきます。一人ずつ交渉しなくても、休憩が仕組みとして守られます。
- 作業と休憩のサイクルを記録し、パフォーマンスの傾向を目に見えるデータにするためのToggl。
- タスクの進み具合を追い、分担された作業をチーム全体から見えるようにするためのTaskee。
役割固有の考慮事項:
- 開発者向け。コードに深く入り込むには、それなりの時間がかかります。関数を書き終えた、テストが通った、区切りのよいところまで来た、といった自然な切れ目で休憩をとるようにすれば、頭に読み込んだ文脈を無駄にせず、作業に戻るときの手間も減らせます。
- マーケターとコンテンツクリエーター向け。分析の仕事と創作の仕事を交互に行うこと自体が、よい頭の休め方になります。文章を書く作業からデータ分析へ、あるいはその逆へと切り替えれば、注意の負担が別の認知の働きに移り、それまで主に使っていた働きを休ませることができます。
- 起業家向け。目の前の業務の問題を考えない「戦略的な一時停止」の時間を予定に組み込むと、日々の業務に押し流されがちな、大きな流れを見きわめる思考や長期的な考えのための余白が生まれます。
興味深い事実
日本の居眠り(いねむり)の習慣は、「眠りながらその場にいる」ことを許す文化的な決まりごとです。日本では、職場や人前で短くうたた寝をしても、怠けているとは受け取られず、むしろ熱心に働いているしるしと見なされます。回復は高いパフォーマンスを保つための一部であって、その反対ではないという考え方の表れです。
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結論
上手に休むことは、質の高い仕事を続けるための土台そのもので、仕事と引き換えに差し出すものとは違います。脳の仕組みから見た根拠も、すでに十分にそろっています。脳には調子の波があり、その波に逆らうより、波に合わせて働くほうが、全体として多くの成果を生みます。そのために、タスクの種類や自分のリズムに合わせて、休憩を前もって予定に入れておくのです。組織としては、しっかり休める文化と仕組みを整えることが、時間がたつほど効いてくるパフォーマンスへの投資になります。慢性的な働きすぎによる頭の働きの衰えを避けられ、質の高い仕事を支える注意力を、仕組みとして保ち続けられるからです。
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